ここ数年、思うことがあります。
それは「ほとんどの音楽は消費財」ということ。
1980年代、1990年代にはそんなことを思わなかったんだけど、2000年代に入ってから思うようになりました。
音楽が簡単に聞き流されていくようになったなぁ~と感じるんです。
昔もCM音楽や映画音楽は消費財としての役割を担っていたように思います。
広告や映像のインパクトを強調する目的で制作された楽曲は、視聴者の記憶には残りにくい性質がありますよね。
もちろん有名な曲もあります。
ロッキーのテーマやトップガンのタイムゾーンは、曲を聴くだけで映画を連想するほどのインパクト。
だけど、映画の中では他にも多くの曲が使われていました。
それらを思い出せるでしょうか?
あくまでも装飾として音楽が使われているので、記憶に残らないんですよね。
基本的にほとんどの音楽は時間の経過と共に忘れ去られていくものです。
でも、私が幼かった頃の80年代、90年代を賑わしたヒット曲は、比較的みんなの記憶に残っています。
サザン、ミスチル、ユーミン、B’z、ドリカム、美空ひばりを知らない人はいないでしょう。
海外アーティストでもマイケル・ジャクソン、マドンナ、ビージーズ、セリーヌ・ディオン、U2、エアロスミスなどは、日本人でもみんな聴いたことがあるはず。
2000年以降に生まれた世代でも知ってますよね。少なくともどこかで聴いたことはあるでしょう。
しかし、2000年以降の売上枚数を見ると、リアーナ、テイラー・スウィフト、ビヨンセ、レディー・ガガらが頑張ってるくらい。
洋楽に興味のない人なら、名前は聞いたことがあるけど曲はほとんど知らない人も多いと思います。
音楽に興味のない人にも知られているのが80年代、90年代のヒット曲。
音楽に興味のない人は全く知らないのが2000年以降のヒット曲と言えそうです。
どうしてこんなことが起きているのか、不思議に思いますよね。
私が思うに、2つの原因があります。
①昔は無料の音楽視聴メディアがテレビとラジオしかなかった
ネットが普及する以前は、無料でヒット曲が聴けるのってテレビとラジオ。
あとはタワレコやHMVの視聴コーナーや友達にCD借りるとか。そのくらいでしたよね。
だから聴ける楽曲の絶対数が少なかったし、友達と共通のミュージシャンの話題で話すことが普通でした。
「昨日のヘイヘイヘイ観た?エレカシの宮本おもろかったな!!」みたいな(笑)
でも今は、テレビやラジオの他にも、YouTubeなどで無料で聴きまくれるんですよね。
そうなると自分の好きな音楽ジャンルのみを聴くことができるわけだけど、逆に世間的なヒット曲を耳にする回数が減ります。
アイドルが好きな人はアイドルの曲ばっか聴いて、ハードロックを聴かなくなるし、
ロックが好きな人はギターバンドばっか聴いて、アイドルの曲を聴かなくなります。
共通のミュージシャンの話題で盛り上がることが昔より減ったんじゃないかなと思うんですよね。
同じ趣味の友達だけで固まって盛りあがれるけど、違う趣味の友達とは話題がないみたいな。
そうなると、「誰もが知っている名曲」って少なくなりますよね。
私はミスチルど真ん中世代なんですけど、学生時代はミスチルがあまり好きじゃなかったんです。
当時は甘ったれた歌詞が嫌いでした。ヘタレが聴くものだと思ってました。
男ならメタルやろ!!と若気の至りで信じ込んでいた黒歴史時代だったので(笑)
今は好きですけどね。ミスチル。
あんなに嫌いだったミスチルだけど、ミスチルのヒット曲は歌えるんですよ。
むしろカラオケで歌うと上手いと言われるくらいに歌えます。
なぜなら、テレビで聴いていたから。
ミュージックステーションに大好きなXのHIDEが出るから観ていると、ミスチルも共演していて、必然的に聴くことになるので覚えちゃうんですよね。
そんな感じでメタル好きな私が安室ちゃんとか、浜崎あゆみとかも覚えるわけです。
こうやって国民的ヒット曲が生まれたのが80年代、90年代だったのではないかと思います。
②音楽業界のビジネスモデルが激変した
ネットの普及はエポックメイキングでした。
CDが売れなくなったんですね。
これはよく言われることですが、やっぱり大きいと思います。
昔はレコードやCDが売れまくっていたので、未来永劫残る作品を作ってやろうという野心に満ちたミュージシャンが多かったと思います。
パッケージも含めて、形として残すことに力を注いでいましたよね。
だけど音楽が無料で聴ける時代になり、形として残すことに執着しない傾向が強くなったと思います。
それよりも体験を重視するようになりました。
ライブですね。
EDMが流行り続けているのはその流れではないかと思ってます。
瞬間をみんなで楽しもう!踊ろう!乗ろう!いい波乗ってんね!みたいなノリ。
体験を提供するツールとしての音楽。
体験が主たる目的になっているので、音楽は体験を強化するためのスパイスとしての役割。
メインディッシュではなくなったのかもしれません。
また、オリジナリティのある楽曲を作るのが難しくなったこともビジネスモデルが激変した一因でしょう。
50年代、60年代はオリジナリティの宝庫で、まったく新しい音楽が次々と生み出されました。
以前紹介したジミヘンもそうだし、ビートルズもそう。
ピンクフロイドやセックスピストルズも当時は新鮮でした。
あらゆるミュージシャンが競い合うように新しい表現を創り出しました。
でも90年代に入ると明らかに限界が見えてきたんですよね。
私はミクスチャーロックが普及し切ったところが頂点だったように感じています。クラシッククロスオーバーとか。
レイジアゲインストザマシンあたりで、もう新しいものは出てこないかもと感じました。
どのミュージシャンも昔誰かがやっていたことのオマージュ・アレンジ・ミックスを繰り返しているだけで、真のオリジナリティを感じるようなものがパタリとなくなったんです。
ここ20年くらいビックリするものを聴けてないのが現実です。
中田ヤスタカとかサカナクションとかゲスの極み乙女。などに新しいものを感じたんですけど、やっぱり誰かのアレンジの範囲内。
当時の人々が唖然としてライブを観ていた、レッドツェッペリンが与えたような衝撃は皆無です。
それでも
でも、いち音楽ファンとしては、まだ期待したい。
体験を重視するトレンドの中から何かが生まれるかもしれないし、信じられないような天才が世に出るかもしれない。
2000年以降の楽曲のほとんどは30年後には消えていると思うけど、残るものもきっとあるはずです。
それがどんな形でこの世に産み落とされるのか楽しみです。
音楽は映画やドラマ、アニメ、CM、個人の思い出などとセットで記憶されることが多いですよね。
しかしそういった音楽は思い入れのある人たちが死んだら淘汰されていきます。
その曲に何の思い入れもない人が初めて聴いた時に「この曲すごい」と思われるものだけが100年後に受け継がれていくはずです。
例えば、ビートルズの楽曲はその域に達しているかもしれません。
ヒット曲のほとんどが消えていく中でクラシックのように生き残るのはどれなのか。
そんなずば抜けた価値のある曲がどれなのか考えながら聴くのも面白いと思います。
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