ロック少年のギター愛を歌った曲 B’z『GUITAR KIDS RHAPSODY』

 

愛の形にはいろいろありますが、「ギター愛」という愛もあるんですよ。

バンドでギターをやっていた人なら誰もが共感するものですが、楽器演奏をしない人にはひょっとしたら分からない感情かもしれません。

ギター愛に目覚めちゃうと、人はこうなります。

「うへへへぇ。レスポールの曲線が美しい…」

「このディストーションたまんねぇぜ、ぐへへへぇ」

「ホワイトファルコンみたいな女と付き合いたいいいい」

 

変態ですね。

ギターの音に骨身が溶けるのはもちろんのこと、ボディーラインの美しさや素材なんかにも惚れるようになります。

 

 

ギター愛に目覚めるのは中学生や高校生の頃が多いです。

音楽を聴き始めて、自分でも弾いてみて、どんどんハマっていきます。

でもギターって高いんですよね。

ちゃんとしたのを買おうとすると、子供が手を出せる価格じゃありません。

入門用のギターとアンプセットなら1万とか2万でもありますが、うまい人たちが弾いているストラトキャスターやレスポールは20万くらいはします。

買いたくても買えない。

楽器屋に行っては、よだれ垂らしながら飾ってあるギターを眺めるだけ。

家に帰ったら「いつかは俺もあのギターを買って、音楽の道で生きていきたい」なんて妄想したりします。

 

そんなギター少年の気持ちを歌ったのが、B’zの『GUITAR KIDS RHAPSODY』

日本語に直訳すると『ギター少年の狂詩曲』

狂詩曲というのは自由で叙事的な楽曲という意味です。

 

少年時代の稲葉浩志さんと松本孝弘さんがどんな気持ちだったのか、この曲から伝わってきます。

 

 

作詞:稲葉浩志

つかの間にソファーで夢を見たよ
ギターをかかえたまま眠ったら
天国のジミヘン達とスポット浴びて同じステージ
忘れかけてた Purple Haze 聞こえてる

Hold On 捨て切れない情熱を
Hold On 抱きしめたまま
Hold On 今もHold On
Guitar Kids Rhapsody

10 Years Ago 放課後は楽器屋に入りびたり
カタログばかりが棚にならんでった
せつないあの娘の瞳に 心さらわれても
ストラト離さなかった あの頃

Hold On 捨て切れない情熱を
Hold On 抱きしめたまま
Hold On 受験にぶつかってたSeventeen
Hold On ホンネとタテマエのクロスロード
Hold On 人生はパズル
Hold On 迷いながらもくぐったキャンパスゲート

ゆずれないことをひとつ 持つことが本当の自由さ
束縛されないことが Baby 自由じゃない Each Other

Hold On Hold On
Hold On 今もHold On
Guitar Kids Rhapsody

Hold On 捨て切れない情熱を
Hold On 抱きしめたまま
Hold On 今もHold On
Guitar Kids Rhapsody

Hold On ゆずれない物を1つ
Hold On 抱きしめたまま
Hold On 今もHold On
Guitar Kids Rhapsody

 

少年時代の思い出と夢を描いている内容なんですけど、この歌詞ってめちゃくちゃリアルなんですよ。

 

「ギターをかかえたまま眠ったら」という一節がありますが、これはギター少年ならみんなやっていること。

私の学生時代は部活をやっていたので、放課後の練習から帰宅するともうクタクタ。

疲れてるから倒れこむようにベッドに寝ころんで、あおむけの姿勢でギターの練習をしていました。

そうするとギターを弾きながら寝ちゃうんですよね。

ギターをやってる友達はみんな同じでした。ギター少年あるある。

稲葉さんも学生時代はインターハイに出場するほどテニスに打ち込んでいたようなので、きっと同じでしょう。
その様子をそのまま歌詞にしてるんだと思います。

マイケル・シェンカー、アイアン・メイデンなんかを聴きながらエアギターもやりまくってたそうです(笑)

 

「放課後は楽器屋に入りびたり カタログばかりが棚にならんでった」というのも、そのままですね。

学生はお金がないので機材が買えません。

「あのテレキャス欲しいな、20万か…」

「MTRがあったら作曲がはかどりそうだな、5万か…」

「オーバードライブのエフェクターならなんとか、1万か…」

みたいな(笑)

すぐには買えないので、カタログだけもらって持って帰って。本棚には音楽機材のカタログがどんどんたまっていくわけです。

 

「せつないあの娘の瞳に 心さらわれても ストラト離さなかった あの頃」というのは、前回紹介した『もう一度キスしたかった』の歌詞にも通じますね。

ロックミュージシャンになる夢がある。高校を卒業したら東京に行くんだ。
地元に残ってあの娘と一緒にいたいけど、自分はストラトを選んだ。

ストラトというのは、ストラトキャスターというフェンダー社製のギターのこと。

すべてのロックギタリストが所有している名器です。

こういう形のやつです。

 

 

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そして稲葉少年は横浜国立大学に合格し、岡山県から神奈川県にやってきます。

「迷いながらもくぐったキャンパスゲート」というフレーズは、ミュージシャンになりたいのに、大学で教員免許なんて取っている場合なのか?という迷いを表現しているのでしょう。

稲葉さんは大学で高校の数学の教員免許を取得していますからね。
音楽でダメになったら先生になるか、他の仕事でもしようと思っていたみたいです。

 

そして最後に、「やりたいことを見つけて、それを捨てないことが本当の自由さ」と謳っています。

人生は束縛されることが当たり前。

やりたいことをしていても束縛はされる。

束縛されないことが自由だなんて勘違いしちゃいけない。

やりたいことを心の中に持ち続けること。それこそが自由なんだと。

稲葉さんの場合はギター愛、ロック愛、音楽愛でしょう。
うまくいかないことはあるけど、愛は捨てない。

理想を叫ぶのではなく、現実的な人生訓を叫んでいます。

 

 

私がこの曲を知ったのは、ギター少年ど真ん中に自分がいた中学生時代でした。

「稲葉さんと今の俺はおんなじだ。稲葉さんもこんな気持ちだったんだなぁ」なんて妙に親近感を持っていました。

それから月日が経って、改めてこの曲の歌詞を読み直すと、リアルだなと感じます。

当時を振り返る立場になって、また違った感じ方をするようになりました。

 

 

ちなみに曲中に出てくる「ジミヘン」というのは、ジミ・ヘンドリックスのこと。

ロックギターの神様、元祖ともいえる人ですね。

ジミヘンの代表曲が『Purple Haze』です。

The Jimi Hendrix Experience – Purple Haze (Live at the Atlanta Pop Festival)

印象的なイントロのリフを聴いたことがある人も多いでしょう。

ジミヘンは天才中の天才。

真のオリジナルです。

右利き用のギターを左手で弾いたり、歯でギターを弾いたり、首の後ろにギターを持ってきて弾いたり、とにかく演奏方法がすべて型破り。

音も型破りで、ファズと呼ばれる強烈な歪みを効かせたギターサウンドを生み出したのは彼です。
今ではロックギターの基本として使われている多くのフレーズも彼が生み出しています。

10代、20代の人がジミヘンを聴いても「うるさいロックをやる人」としか思わないかもしれませんが、現在にいたるまでのハードロックギターの演奏を生み出したのはジミヘンなんですよ。

現在、世に出ているプロギタリストは全員ジミヘンのパクリでしかありません。
全然言い過ぎじゃなくて、マジ。

ジミヘン以降に出てきたミュージシャンたちは、ジミヘンが始めたことを真似して少しアレンジしてるだけなんですよ。

世界中のすべてのギタリストがジミヘンをパクったので、今初めてジミヘンを聴いた人はオリジナリティのすごさが実感できなくて、誰もがやっていることをジミヘンもやっているように聴こえちゃうんです。皮肉ですね。

ジミ・ヘンドリックスという人は、誰の真似でもない唯一無二のアイデンティティをこの世に広めたんです。
死後約50年が経ちましたが「史上最高のロックギタリスト」と評価されています。

ストラトキャスターが広まったのも、当時無名のギターだったストラトをジミヘンが好んで使っていた影響が大きいです。

三大ギタリストの一人ジェフ・ベックは「好調な時のジミを超えるギタリストなどいるはずがない。自分がギタリストであることが恥ずかしくなるよ」と語っています。エリック・クラプトンも「僕とジェフ・ベックが2人がかりでいっても、ジミにはかなわないだろう」と評価。

ちなみにジェフ・ベックのことを布袋寅泰は「さすがにジェフ・ベックの前でギターを弾こうとは思わない」と言っています。

上には上がいるってことですね(笑)

 

稲葉さんの夢にも出てくるのは当然の人だったわけです。

1970年にドラッグで若くして亡くなっちゃったんですけどね。

 

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